「息子のボーイフレンド」感想・レビュー・あらすじ

人間ドラマ小説

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面白かったです。

「自分は腐女子(BL大好き)だけれど、それが自分の息子となると話は別!」

突然の息子からのカミングアウトに衝撃を受ける女性から話が始まります。テーマ自体は重いはずなのに、息子もその恋人もイケメンで性格もよく、笑いも込みの軽いタッチで書かれているので、サクサク読めます。でも、当事者たち(家族含む)の苦しみや葛藤もしっかり描かれ、そして家族愛がじんわり心に沁みる良本です。

軽い読み物として、エンタメとして読みたい方におすすめの一冊です。

感想(ネタバレあり)

自分も腐女子で子供もいるので、もし自分だったらどうだろう、と想像しながら読みました。カミングアウトされた母親と、アクシデント的に知ってしまった父親のショックと拒絶は真に迫ってきて、まぁそうなるよなぁ、、、と。世間体もありますが、とにかく、子供が不幸になるのが心配なんですよね。自分の子供が大多数と違う、というだけで、将来その子がぶつかる壁や痛みを無限に想像してしまう。でも、その不安を乗り越え、結局は息子自身が選ぶ道を受け入れ尊重する、というところまでいけたのは、親の愛だと思いました。

その一方で、これだけ好条件が揃ってやっと、なんとか受け入れることができるくらい、これは家族にとって難しい問題でもあるんだな、、と。

まっすぐ育ったイケメン息子の、一切の迷いのない強い希望、そして相手の男の子の人柄、容姿、学歴の素晴らしさ(実際こんな子いる?笑)、そして2人ともしっかり自分たち(親)と対話し、こちらの気持ちを尊重しようとしてくれる…。これだけそろってやっと「受け入れ味方になる」ということができたんですよね。

また、優美(母の親友)が、息子くんにとって最初の強い味方になるのですが、優美のような考え方を持つ人が私はとても好きです。ただ一点だけ、気になったのが、「私、腐女子だから」と優美が明るくゲイの当事者達に告げる場面がありますが、現実の世界で、ゲイの人たちはこう言われて好意的な受け止めをするんだろうか、とは疑問に感じました。(BLというエンタメ作品と自分達を、同じ目で見られているような不快感は感じないのだろうか…と。)私は当事者ではないので、これもあくまで想像にすぎないのですが…。

また、この作品は、私はどうしても親目線で読んでしまいました。(若い二人の恋の場面では、多少腐女子としての血が騒ぎましたが笑)
普段忘れがちですが、子供自身が「今」笑顔であることが、何よりも大事なことなんですよね。これは、本書で少し出てきた介護のエピソードからも感じたのですが、人生は有限で、今どんなに若く元気で美しくても、いつか必ず歳をとり、枯れ、死を迎える。(それを若干二十歳でわかっている雄哉ってすごい)なので、「今」の輝きを味わいながら、生きてほしい。親が子供の将来の心配ばかりに目を向け、今のその子の笑顔と幸せをないがしろにしてはならないんだよなぁ、、と本を読みながら思いました。親の価値観に反する子供の言動に直面した時、自分自身の気持ちと、子供の気持ち両方に向き合い、折り合いをつけながら答えを出していく作業は、ある意味自身の修行とも言えるんじゃないでしょうか。笑 (自分は全然できていませんが…とほほ)

いろいろ書きましたが、なんだかんだ言ってこの小説、しっかり楽しんで、笑い、うるっとし、いい読後感を味わえました。