とてもよかったです…。
この本には、誰もがどこかしら共感してしまう言葉や感情が散りばめられていると思います。
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以下、なるべくネタバレ無しの感想です。
マンションの屋上庭園にある「縁切り神社」。そこを訪れる「生きづらさ」を抱えた人たちと、彼らの間に流れる優しいつながりが描かれています。
登場人物は、39歳の未婚女性、血の繋がらない父と娘、性的マイノリティの男性、激務で鬱を患った男性などがでてきます。
正直、自分が経験したことのない環境にいる人達ばかりで、39歳独身女性の心情に自分が共感できるだろうか、と思いながら読み進めました。ですが、さらりと人の感情の核心を突きまくる文章、そしてストーリー自体に惹き込まれ、気がついたら一気読みでした。
世間体を気にする気持ちが心の片隅に陰を落としていたり、どこか自分の人生に焦りがあったり、どうしても前に進めない悲しみを抱えていたりーー、誰もが生きていればいろいろとあると思います。
けれど多くの人はそれを上手く言語化できないまま、毎日を過ごしているのではないでしょうか(少なくとも私はその1人です)。この小説は、そんな私たちの感情を的確に明文化し、さらに優しく包み込んでくれるようなものがたりでした。
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以下、私が個人的に共感した箇所も共有させていただきます。(なので本の内容にも触れています。ネタバレというほどではないですが、本書をこれから読みたい方はご遠慮ください)
統理という30代半ばの男性が、血の繋がらない10歳の娘との生活を友人に振り返るシーンです。
「正直言うと、引き取ったことを後悔したこともある」「そりゃそうだろ」ーー血でつながれないなら、他でつながるしかない。愛情と寛容と忍耐を駆使して、それでも喧嘩は勃発し、小さな家の中で顔を背け合い、翌朝も不機嫌にすれ違い、仏頂面で向かい合い、気まずく朝食を食べ、昼くらいには反省し始め、仕方ない、帰ったらこっちから謝るかと思いながら午後を過ごす。他人同士なんて死ぬほどめんどくさいことを繰り返すことでしかつながっていけない。(p170)
この箇所を読んで、あぁ、自分じゃん。と思いました。私も、夫や子供との共同生活の中で、「死ぬほどめんどくさいこと」をしているんだ、と。そして過ぎゆく日々の中、気がついたら心が疲れていることもあります。でも、そんな日常を、そのまま肯定してもらえてるような気持ちになりました。
ーー本のどこに共感するかは、自分が置かれている状況によって人それぞれ違うと思います。でも、ここに出てくる登場人物にそれぞれ共感する読者がいるーすなわちこの世の中でこんな感じ方をしている人達もいるんだ、自分に見えてないだけで、皆それぞれいろいろあるんだよなぁ、、、と、しみじみと思わされる小説でした。